階段・ランニングで痛む太ももの外側…スポーツ障害との関係性とは?

2025年06月11日

茨木市のまつお鍼灸整骨院では、脚の痛みでお悩みの方へ向けて、役立つ情報を提供しています。患者さんからよくいただく質問や疑問に対する回答を、私自身が勉強してきたことや、実際の施術経験に基づいて、記事にまとめています。

「ランニングをすると太ももの外側がズキズキ痛む…」

「階段を下りるときに膝の外側に違和感がある」

そのような症状でお悩みの方は、「腸脛靭帯炎」を疑う必要があります。

この記事では、階段や走るときに太ももの外側が痛む原因と、スポーツ障害としての腸脛靭帯炎の特徴、改善・予防方法までを詳しく解説します。

腸脛靭帯とは?

腸脛靭帯は、骨盤から太ももの外側を通り、膝の外側まで繋がっている強靭な靭帯です。太ももを安定させ、膝の動きをサポートする役割があります。

しかし、ランニングや階段の上り下りなど、膝の曲げ伸ばしを繰り返す動作が多いと、腸脛靭帯が膝の外側にある大腿骨と摩擦を起こし、炎症を引き起こすことがあります。

これが「腸脛靭帯炎(ランナー膝)」です。

なぜスポーツで痛みやすいのか?

腸脛靭帯炎は、膝の外側に痛みが出る代表的なスポーツ障害のひとつで、特に「膝の屈伸を繰り返す動作」や「膝の安定性が求められる動作」が多い競技で発症リスクが高くなります

● ランニング(特に長距離・マラソン)

長時間のランニングでは、腸脛靭帯に負担がかかり、特に以下のような条件が重なるとリスクが増大します:

✔下り坂:重力に逆らってブレーキをかけながら走るため、膝への衝撃が大きい

✔硬いアスファルト路面:膝へのクッションが効かず、ダメージが蓄積

✔フォームの問題(膝が内に入る・足の着地位置):靭帯が引っ張られる角度が不自然になり、摩擦が増す

● 階段・登山・ハイキング

階段や山道の下りは、「膝で身体を支える」動作が続くため、膝外側へのストレスが非常に強くなります。

下り動作では、大腿四頭筋がブレーキをかけながら働くため、膝が不安定になりやすく腸脛靭帯が過剰に緊張します。

凸凹のある地面では、バランスを取るために膝と股関節が不自然な角度で使われやすく、摩擦がさらに増えます。

● サッカー・バスケットボールなどの切り返しが多い競技

腸脛靭帯は、「脚を前後・左右に安定させる」ためのブレーキの役割も果たします。
そのため以下のような動作で大きく使われます:

✔急な方向転換

✔ストップ&ダッシュ

✔片足での着地やジャンプ動作

特に**股関節の外旋・膝の内側への倒れ込み(ニーイン)**があると、腸脛靭帯が大きく引っ張られ、膝の外側に炎症が起こりやすくなります。

痛みの特徴

腸脛靭帯炎では、太ももの外側〜膝の外側にかけての痛みや違和感が特徴です。特に膝の外側に「ズキッ」とした鋭い痛みが出やすく、押すとピンポイントに痛みを感じます。

**初期段階では、**走り出してから数分~十数分後に痛みが出始め、一旦立ち止まって休むと自然に軽減するのが特徴です。この時点ではまだ炎症が軽度で、運動中に一時的に摩擦が強まることで症状が出ています。

**進行すると、**痛みは休んでも取れにくくなり、**歩くだけでも違和感や痛みが出るようになります。**階段の下り動作では膝の角度が浅く保たれ、腸脛靭帯と骨の摩擦が強まるため、より強い痛みを感じやすくなります。

このように、症状は進行に伴って運動中だけでなく日常動作にも支障が出るようになり、放置すれば慢性化する恐れもあります。

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スポーツ障害との関係性

腸脛靭帯炎は、ランニングやサイクリングなど、膝の屈伸を繰り返す動作を長時間行うスポーツで発症しやすい「使いすぎ(オーバーユース)」の障害です。

ただし、「使いすぎ」だけが原因ではありません。腸脛靭帯が過剰に摩擦を受けやすくなる背景には、次のような要因がいくつか絡み合っています

■ スポーツ障害として発症しやすい理由

1. 筋力バランスの乱れ

特に問題となるのが、中臀筋や大臀筋などのお尻の筋肉、股関節外転筋の筋力低下です。これらの筋肉が弱いと、走行時に骨盤が安定せず、膝が内側に入ってしまい、腸脛靭帯にかかるストレスが増大します。

2. 柔軟性の欠如

大腿筋膜張筋や臀筋群が硬い状態では、腸脛靭帯の柔軟性が失われ、摩擦が生じやすくなります。とくに、ストレッチ不足のままトレーニングを重ねている場合、炎症が起こりやすい傾向にあります。

3. ランニングフォームの崩れ

代表的なのが、膝が内側に入る(ニーイン)フォーム。これは左右の筋力差や足部の過回内(オーバープロネーション)によって引き起こされ、腸脛靭帯の外側引き伸ばしが繰り返されることで炎症に繋がります。

4. 足首や骨盤のアライメント異常

足首の過剰な回内や骨盤の傾き・歪みがあると、走行時の身体の軸がブレてしまい、腸脛靭帯にかかる負荷が左右非対称になります。これが炎症のリスクを高める原因になります。

 

■ 腸脛靭帯炎の予防・改善法を徹底解説

腸脛靭帯炎は「繰り返しの負担」によって引き起こされるため、根本的な改善のためには一時的な対処だけでなく、再発を防ぐ体づくりと動作改善が必須です。


1. 一時的な運動量の調整

痛みが強い時期は無理をしないことが大事です。  無理に練習や運動を続けると、炎症が慢性化し治りづらくなります。

特に「走る・登る・階段を降りる」などの動作は強いストレスをかけるため、一旦控えることが重要です。

アイシングや湿布での局所的な炎症抑制も有効です(痛みが出始めた直後に冷やすと◎)。


2. ストレッチ

腸脛靭帯そのものは靭帯なので柔軟性はあまりなく、直接伸ばすことは難しいです。
そのため、関連する筋肉や筋膜の柔軟性を高めることがカギになります。

✔大腿筋膜張筋(太ももの外側):腸脛靭帯とつながっているため、張っていると靭帯が常に引っ張られます

✔中臀筋・大臀筋(お尻の筋肉):骨盤の安定に関わり、硬くなるとフォームが乱れやすくなります

✔股関節の可動域:股関節が固くなると膝で代償動作が起き、腸脛靭帯に負担が集中


3. 筋力トレーニング

腸脛靭帯炎の背景には、お尻(中臀筋)や体幹の筋力不足があるケースが非常に多いです。

中臀筋が弱いと膝が内側に入りやすくなり、腸脛靭帯に過剰なテンションがかかる

腰まわりや股関節を安定させるための**体幹トレーニング(プランク、サイドブリッジなど)**も取り入れましょう

筋力トレーニングは「左右差を整える」ことも意識し、フォームの安定化につなげます


4. 姿勢・歩行・フォームの改善

何より重要なのが、普段の動きや姿勢に潜む負担のクセを見直すことです。

・骨盤が左右どちらかに傾いていないか

・つま先や膝が内側を向いていないか

・上半身が丸まって、脚にばかり負担がかかっていないか

 

また、ランニングやウォーキングフォームの改善も大切です。

・着地が強くなりすぎていないか

・ストライドが広すぎないか

・骨盤の回旋や体幹のブレがないか


5. 靴やインソールの見直し

靴の影響は、腸脛靭帯への負担に直結します。

・クッション性に優れたランニングシューズを選ぶことで、地面からの衝撃を緩和

・過回内(足首が内側に倒れすぎる)傾向がある場合は、アーチサポート入りのインソールが効果的

靴底がすり減っていないか、サイズが合っているかも再確認しましょう

腸脛靭帯炎の予防と改善には、「炎症を抑える」だけでは不十分です。全身の柔軟性・筋力・姿勢・フォーム・足元までトータルで見直すことで、根本的な改善が可能になります。

まとめ|太ももの外側の痛みは「オーバーユース」の信号

階段やランニングで痛む太ももの外側は、体からの危険信号です。

✔腸脛靭帯炎は、初期なら早期改善が可能

✔原因は単なる使いすぎではなく、姿勢や動き方の問題が背景にある

✔正しいケアと専門的なサポートで、再発予防も含めて改善可能

少しでも痛みを感じたら無理せずに早めにケアを行っていくことが大切です。

 

 

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参考文献
日本整形外科学会

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