佐々木朗希投手のインピンジメント症候群とは?原因と復帰までの期間について解説
2025年05月15日
茨木市のまつお鍼灸整骨院では、肩の痛みでお悩みの方々へ向けて、役立つ情報を提供しています。患者さんからよくいただく質問や疑問に対する回答を、私自身が勉強してきたことや、実際の施術経験に基づいて、記事にまとめています。
ドジャースの佐々木朗希投手が右肩のインピンジメント症候群と診断され、負傷者リスト入りとなりました。
今回はインピンジメント症候群について原因や復帰時期について解説していきます。
インピンジメント症候群とは?
インピンジメント症候群は、肩関節を構成する骨や筋肉、腱などが衝突し、炎症や痛みを引き起こす状態を指します。 特に、腕を上げる動作で肩峰下滑液包や腱板が肩峰と上腕骨頭の間で挟まれることで発症します。
肩関節は「肩甲骨」と「上腕骨」とで構成され、その間に腱板と呼ばれる筋肉の束があります。
また、腱板の上には肩峰下滑液包というクッションのような組織があり、動作時に摩擦を減らす役割をしています。
しかし、何らかの原因で以下のような変化が起こると…
✔骨が変形して棘(とげ)ができる
✔姿勢不良により肩の構造が狭くなる
✔筋肉の柔軟性が落ちる
✔腱板や滑液包が肥厚・炎症を起こす
この狭いスペースで、腱板や滑液包が骨と骨に挟まれ(インピンジメント)、炎症・摩耗・痛みを引き起こすのです。
野球の投球動作のような反復的な肩の動きが原因となることが多く、いわゆる「野球肩」の一種とされています。
スポーツ選手だけでなく一般の人でも比較的みられる疾患
インピンジメント症候群は、スポーツ選手だけでなく、デスクワークや家事をする一般の方にも多く見られる症状であり、進行すると腱板断裂や慢性疼痛、可動域制限へと悪化するリスクもあります。
✅肩を上げると痛い
✅腕を上げると引っかかる感じがする
✅服を着替えるのがつらい
こうした症状がある方は、インピンジメント症候群の可能性があります。
インピンジメント症候群の主な原因
1. 姿勢不良・猫背・巻き肩
長時間のスマホ・PC使用やデスクワークでの猫背は、肩甲骨の位置を前方・下方に引き下げてしまいます。これにより、肩関節の可動域が狭くなり、インピンジメントが起こりやすくなります。
2. 加齢や過使用による腱板の変性
40歳以上になると腱板の血流が悪くなり、柔軟性が低下します。この変性によって腱板が厚くなると、狭い関節内での摩擦が増えます。
3. スポーツ(特に投球・水泳・テニスなど)
同じ動作を繰り返すことで、腱板や滑液包に慢性的な摩擦や圧迫が加わりやすくなり、インピンジメントに発展します。
4. 外傷や肩関節の構造異常(骨棘など)
骨の変形や関節の構造的な問題によって、関節内の隙間が狭くなり、挟み込みが起こることがあります。
インピンジメント症候群の症状
✔腕を上げるときに肩が痛む(特に60〜120度の角度)
✔肩の前面〜側面にかけての鈍痛
✔夜間痛(寝返りや仰向けで痛みが出る)
✔動かすと“引っかかるような”違和感
✔洋服を脱ぐ・洗濯物を干すなどの動作がつらい
こういった症状が出始めたら、早期に対処することが重要です。
放置するとどうなる?重症化のリスク
インピンジメント症候群を放置すると、以下のような重大な障害につながる可能性があります
● 腱板断裂(けんばんだんれつ)
炎症と摩耗が進むと、腱板が部分的または完全に断裂することがあります。断裂が起こると痛みだけでなく、腕が上がらない・力が入らないといった機能障害に。
● 慢性肩関節周囲炎(五十肩)
関節包や周囲の組織が固まり、肩が動かせなくなる(拘縮)ことも。「ずっと我慢していたら、今度は動かせなくなった」という方は非常に多いです。
インピンジメント症候群の改善と予防法
● 肩関節の安静と炎症の抑制
初期症状が強い場合は、無理に動かさず安静を保ちつつ、アイシングや消炎処置を行います。
● 姿勢改善・肩甲骨の可動性アップ
姿勢を見直し、肩甲骨・胸郭の動きを良くするストレッチや体操を習慣化することで、圧迫を減らせます。
● 肩関節周囲の筋バランスを整える
✔肩甲下筋や棘下筋など、腱板筋の強化
✔胸筋や僧帽筋の柔軟性確保
✔背骨のゆがみや胸郭の開き改善
【インピンジメント症候群の復帰までの期間目安】
■軽度(初期症状レベル/炎症中心)
目安:2〜4週間
症状:痛みはあるが、日常生活に大きな支障なし。腕もある程度挙げられる。
対応:アイシング、安静、ストレッチ、運動制限、理学療法など。
備考:無理に動かさなければ比較的早期に回復可能。
■中等度(腱板への負担増・滑液包の肥厚あり)
目安:1〜3か月
症状:腕を上げると痛い、夜間痛あり、投球や荷物を持つ動作で強く痛む。
対応:運動制限+リハビリ(肩甲骨・体幹安定)+超音波療法など
備考:筋バランスの改善と姿勢矯正が鍵。復帰には段階的な負荷調整が必要。
■重度(腱板の損傷あり)
目安:3〜6か月(手術の場合は6か月以上)
症状:可動域制限、筋力低下、夜間痛が強く日常生活も困難。
対応:
保存療法で改善が見込めない場合は関節鏡視下手術を検討。
術後リハビリ→関節可動域回復→筋力トレーニング→競技復帰
【スポーツ選手の場合の復帰目安】
軽症(投球制限あり):2〜3週間でキャッチボール再開可能なケースもあり
中等度(再発防止プログラム含む):1〜3か月
重度:6〜12か月(特に野球の投球復帰は慎重に段階を踏む)
まとめ
インピンジメント症候群は、肩関節内で腱や滑液包などの軟部組織が骨と衝突することで炎症や痛みを引き起こす疾患です。
スマホやデスクワークによる姿勢不良から、投球や反復運動を行うスポーツ選手まで、幅広い年代・職種の方に発症する可能性があります。
症状が軽度であれば数週間での回復も期待できますが、状態によっては数か月単位のリハビリや、場合によっては手術・長期離脱を要するケースもあります。
今回の佐々木投手のケースですが、軽症の可能性はあるものの、無理をして再発すると長期離脱にもなりかねないので、無理をせずしばらくの間、リハビリに専念するのではないでしょうか?
焦らず、そして何より万全の状態で戻ってきてほしいですね。
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